本物そっくりのミニカーが自動車の意匠権の侵害になる欧州と侵害にならない日本

本物そっくりのミニカーを製造販売しても自動車の意匠権を侵害しない日本の意匠制度。
日本の意匠法は、意匠権侵害を構成する要件に、物品の同一・類似性を規定しています。
自動車の物品名である「乗用自動車」とミニカーの物品名である「自動車おもちゃ」とは物品が非類似なので意匠権の侵害には該当しません。

各国の意匠法が必ずしも日本の意匠法と同じような制度で設計されているとは限らず、日本の法基準で考えていると思わぬリスクを招きかねません。

欧州の意匠制度は物品性の要件が緩く、出願時の願書に記載した物品名が保護範囲に影響を与えることはありません(EXAMINATION GUIDELINES COMMUNITY DESIGN: 6.1. Clear Indication (Art. 36(2) CDR; Art 1(1)(d), 3(3) CDIR))。
願書に記載された物品に拘束されず、侵害判断においては、対象物の全体的印象が同じか否かで侵害の有無が判断されます。
つまり欧州意匠登録出願時の願書に「自動車」と記載しても、その意匠権の効力は「自動車」に拘束されずにミニカーにも及ぶことになります。

物品を離れて全体的印象の同一性で権利範囲を決めるという欧州意匠制度の活用方法として、「意匠」としての保護を求めるのみならず、「」としての保護を求めることもできます。
ロゴデザインを商標ではなく意匠として出願すれば、商標出願に必要な商品・サービスに拘束されることがありません。
商標として出願しようとすれば、区分ごとに商品・サービスを指定しなければなりません。
区分毎に費用が増えてしまう商標登録制度よりも、出願時の願書に形式的に一つの物品名を記載するだけで、実質的な保護範囲は物品に拘束されない意匠制度の方が遥かに使い勝手に優れています。

唯一の欠点は、権利期間が、商標権が半永久的であるのに対して意匠権が25年であることです。
しかし商標登録と意匠登録のダブルトラックも可能ですから、必要最小限の区分で商標登録をしつつ、商標区分で保護されない他の区分については意匠登録で補うという方法も考えられます。

一つの権利で欧州全域に効力が及び、かつ物品に拘束されずに広い範囲に保護が及ぶ欧州意匠制度。

その極めつけは、無審査制度を採用していることです。
審査がないため出願から登録までの時間が極めて短く僅か数日で登録されてしまいます。

例えば取引契約で知的財産権が必要なときにはまず欧州意匠登録出願をして権利を確保しておくという利用も良いでしょう。

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