偽物を「所有」する時代から本物を「利用」する時代へ

安い人件費を求めて自らの手で製造することを放棄し、海外の委託工場で製造した製品に、これまで自らが長い時間をかけて築き上げてきた信用が化体した商標を付して売るというビジネスモデルに移行したことが、現在、これほどまでに偽物が氾濫していることの原因です。

一昔前の偽物は、品質に問題があり、本物に比べて値段が安いというだけの粗悪品であり、市場においてそのような偽物が流通したとしても、本物の優位性が揺らぐことはありません。
そのような時代に偽物対策など必要はなく、偽物が本物を駆逐するというようなことは起こりません。

現在の偽物は、品質に問題がない上に、本物に比べて値段が安いことが特徴であり、製品としてはどちらも同じという、本物にとっては非常に厳しい現状です。
特に、海外の正規工場で過剰に製造されて横流しされたような製品は、本物と偽物の違いは、適切に商標が付されているか否かの違いであり、品質において本物と偽物とにおいて差異はありません。

商標以外に差異がないにもかかわらず、商標の有無だけで高価格を設定している本物は、高品質低価格の偽物に駆逐されることを恐れながら、モグラたたきのような偽物対策に明け暮れることになります。

商標の機能の一つに品質保証があります。
しかし、偽物と品質において差異がない製品に商標を付したとしても、形式的に本物を装っているだけで、商標を付すことで品質を保証し、偽物と区別するという商標の本質的な機能を発揮するには至っていません。

偽物と差別化を図るための付加価値が何かを真剣に考えない限り、偽物が本物を駆逐することは、もはや時間の問題です。

品質において偽物と差別化することが限界に達している現在、品質以外の何かで偽物と差別化するためのビジネスモデルを構築することを考える必要があります。

一つの答えがサブスクリプション方式にあります。
これまでデジタル分野で利用されてきたサブスクリプション方式が今後は非デジタル分野でも利用されることが予想されます。
「所有」から「利用」へ、サブスクリプション方式により、消費者との繋がりが大きく異なります。
「所有」するというこれまでのビジネスモデルにおいて、製品を売った後の消費者との繋がりと言えば製品保証だけです。
その製品保証も保証期間が過ぎた時点で終焉を迎えます。

一方、消費者に「利用」する権利を与えるサブスクリプションによるビジネスモデルにおいて、製品を利用し続ける限り消費者との繋がりを維持することができます。
製品保証はもちろん、常に最新の製品を提供するという付加価値は、現時点において偽物と差別化を図るための手段としては申し分ありません。

偽物を「所有」するよりも本物を「利用」する時代へ、サブスクリプション方式がこれからの偽物対策の鍵になります。

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