キャラクタの著作権、ロゴマークの商標権、デザインの意匠権、技術の特許権など、知的財産権の侵害を判断するときにしばしば耳にする「似ている」という言葉。
「似ている」と判断されれば侵害となってしまうだけに、客観的かつ慎重に判断したいところですが、「似ている」の判断は知的財産権の専門家でもとても難しいことなのです。
専門家でも難しい「似ている」の判断ですが、どのように判断されるかを知っておくだけでも、他人の権利を侵害したり、誤って他人に権利の侵害だと主張してしまうことを防ぐことができます。
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それでは知的財産権の世界の「似ている」を説明していきます。
まずは特許の世界。
特許は発明と言われる技術的なアイデアを保護する知的財産権です。
「似ている」を判断するときも技術的な理解と解釈に基いて判断します。
高度な技術を理解し、技術的な違いが何かを特定し、その違いが技術的に「似ている」のかどうかを判断します。
知的財産権の世界でも最も高度な判断が求められるのは特許の世界です。
つぎに商標の世界。
商標は文字や記号などのロゴマークを保護する知的財産権です。
「似ている」を判断するときはロゴマークが登録されている商標の区分と、ロゴマークの見た目・呼び方・連想で判断します。
商標の区分とは、商品やサービスに応じて分類された1から45までの区分のことです。
見た目とは、ロゴマークの外観、呼び方とはロゴマークの発音、連想とはロゴマークを見たり聞いたりしたときに連想するものです。
見た目と呼び方と連想を総合的に判断して「似ている」のかどうかを判断します。
そして意匠の世界。
意匠はモノの外観を保護する知的財産権です。
「似ている」を判断するときはモノの種類とモノの見た目で判断します。
意匠も商標と同じようにモノに応じて分類されています。
例えばミニカーのデザインとクルマのデザインが似ていても、ミニカーとクルマとではモノの分類が違うので意匠法上「似ている」と判断されることはありません。
最後に著作権の世界。
著作権は音楽・文章・図形などで表現されたコンテンツを保護する知的財産権です。
「似ている」を判断するときは表現の仕方で判断します。
他の知的財産権と違って著作権の世界で「似ている」を判断するときに大切なことがあります。
それは人のコンテンツを真似したかどうかです。
言い換えると、表現の仕方が似ていても、人のコンテンツを真似したのではなく、自分で考えたコンテンツであれば、例え表現の仕方が似ていても著作権の侵害と判断されることはありません。
番外編として不正競争防止法の世界。
他の知的財産権は権利というものが存在しますが、不正競争防止法の世界では権利というものが存在しなくても不正行為を防止することで知的財産を保護します。
ロゴマークが商標登録されていない商品やロゴマークがついていない他人の商品を真似した場合、商標権の侵害にはならなくても不正行為として不正競争防止法が適用されることがあります。
不正行為かどうか判断するときに他人の商品と「似ている」かどうかを判断します。
「似ている」と判断する方法は、商標や意匠のときと共通します。
知的財産権の世界の「似ている」の判断、非常に奥が深い世界です。