ブログ

中国商標法改正。複数の区分を纏めるデメリット

中国商標法

改正前の中国商標法では、1つの出願に1つの区分しか含めることができませんでした。

日本では1つの出願に複数の区分を含めることができるので不便を感じることもありましたが、2014年5月1日に施行される改正中国商標法では、1つの出願に複数の区分を含めることができる、多区分制が採用されることになりました。

1つの出願で複数の区分を含めることができるので、出願するときの費用をある程度、抑えることができます。

 

一見便利そうですが、現時点では区分ごとに出願する従来通りの方法で出願することを推します。

理由は、結局、費用がかかること、登録までの時間が長くなること、登録後の商標管理が面倒なこと、です。

 

例えばABCという商標を、3つの区分1,2,3で出願する場合を考えてみます。

改正後は、従来と同じ方法で、それぞれの区分について、出願X(1)、出願Y(2)、出願Z(3)として出願する方法と、多区分制を利用して、全ての区分を含めて、出願W(1、2、3)として出願する方法の2通りを選ぶことができます。

 

審査の結果、区分1に拒絶理由が存在するが、区分2と区分3には拒絶理由が存在しなかったとします。

 

従来の方法なら、出願Y(区分2)と出願Z(区分3)は公告後、登録されます。

拒絶理由が存在する出願X(区分1)に対しては拒絶査定が通知されるので、必要なら不服の審判を請求します。

 

多区分制を利用して出願した場合、出願Wには、拒絶理由が存在する区分1が含まれるため、拒絶査定が通知されます。

拒絶理由が存在しない区分2と区分3も出願全体として拒絶査定となります。

拒絶理由が存在しない区分2と区分3を登録させるためには分割手続きが必要になります。

 

分割手続きのときに費用が発生しますが、この費用は従来の方法で出願していれば発生しない費用です。

 

 

さらに審査期間が長くなるという問題があります。

商標審査に要する期間は区分ごとに異なります。

現在の審査期間は平均で1年程度ですが、この意味は、ある区分では8ヶ月程度で登録になり、ある区分では16ヶ月程度で登録になるということです。

 

複数の区分を1つにまとめてしまうと、全ての区分の審査が終わるまで審査結果が通知されません。

拒絶理由が存在しない区分2と区分3の審査はすでに終了しているのに、区分1の審査が終了しないので出願Wの審査結果が通知されないということになります。

区分2と区分3の審査は8ヶ月で終わっても、区分1の審査に16ヶ月がかかった場合、区分2と区分3も16ヶ月経たないと審査結果が通知されません。

 

模倣品がすぐに出回る中国では、武器となる商標権がなければ模倣品対策ができません。

大事な商標は区分ごとに出願して早期に権利化を目指しましょう。

 

 

そして商標権が登録された後の商標管理の問題です。

多区分制を利用して出願して、そのまま登録になると1つの商標権に複数の区分が含まれることになります。

区分ごとに商標権があるわけですが、例えば、10年後に商標権を更新をするとき、たとえ不要となった区分が存在していても、その区分の更新料も支払わなければならないことが予想されます(現時点では明らかではありません)。

 

また商標ABCの、区分1の商標権を譲渡するには、まず区分1の商標権を分割しなければなりません。

現時点でこのような分割が認められるのか否かが不明なので、将来の事業譲渡で区分1の商標権を譲渡することになった場合でも、譲渡できないことになります。

 

出願するときは複数の区分をまとめて管理できるので便利ですが、逆に商標権が登録された後の管理では不便なことが少なくありません。

 

 

海外の手続きで大切なことは不要な手続きを発生させないことです。

手続きでのミスはどうしても発生します。

手続きを少なくするために費用を惜しまないことも大切です。

photo credit: umjanedoan via photopin cc

関連記事

  1. 中国で商標やデザインを登録していない場合に第三者に摸倣された場合…
  2. 中国語ネーミング開発 ”しまむら”に学ぶ中国語のネーミング
  3. 日本企業に不利な中国での改良技術の扱い 日本企業に不利な中国での改良技術の扱い
  4. キャラクター生地をハンドメイド加工して販売することを「おかしい」と思える感覚 著作権侵害になるキャラクター生地の利用 ハンドメイド加工・販売す…
  5. 真の著作権者は誰にも分からない 真の著作権者は誰にも分からない
  6. 中国の特許のレベルが日本に比べて低い理由 中国の特許のレベルが日本に比べて低い理由
  7. 新元号の商標登録可能性について解説します
  8. 「特許出願するとノウハウが開示されてしまう」ことはない 「特許出願するとノウハウが開示されてしまう」ことはない

このコラムを書いている人

TANAKA Tomio

TANAKA Tomio

2004年弁理士登録 電機・電子・IT分野を得意とし国内・国外の権利化について豊富な経験と実績あり。 中国上海駐在経験を活かし中国実務についても豊富な経験あり。 知的財産調査官として特許を始め意匠・商標・著作権・不正競争防止に係る模倣品の輸入差止め審査に従事した経験を活かし模倣品対策についても積極的に取り組む。

パーソナルリンク

認証済みサービス

プロフィールを表示 →

PAGE TOP