中国で模倣品対策を行うためには中国で商標権や意匠権などの知的財産権を取得するのが原則です。
ところが著作権の場合は日本で創作した著作物であっても何の手続きをすることもなく中国で著作権を発生させることができます。
著作権は登録手続きを必要としないというメリットの他に、保護が及ぶ範囲が広いというメリットもあります。
商標権を取得するときに必要な区分という考え方はなく、意匠権を取得するときに必要な物品という考え方もありません。
区分や物品という枠を超えて著作権の保護が及びます。
国境という壁を越え区分や物品という枠を越えて発生する著作権は、中国で模倣品対策を行う場合にさらに効果を発揮します。
中国で模倣品の取り締まりを行うのは裁判所だけではありません。
知的財産権を管轄する各行政機関がそれぞれ独自の取り締まりを行っています。
なかでも税関は商標権や意匠権を始めほとんどの知的財産権の侵害品の取り締まりを行っています。
もちろん著作権も例外ではありません。
中国の税関で模倣品の差止めを行う方法は、知的財産権の権利者自身が発見した模倣品の差止めを税関に申し立てる方法と、税関職員自身が職権で模倣品を発見して差止める方法があります。
権利者が裁判所に侵害有無の判断を申し立てた後に行う税関差止めと違い、職権による差止めの場合は税関自らが侵害の有無を判断するたため、権利者が負担する裁判手続きや裁判費用が要りません。
職権による模倣品の差止めを利用するためには、差止めの根拠となる知的財産権を税関に事前に登録しておく必要があります。
税関登録の手続きに必要な書類の一つに、商標登録証や意匠登録証といった権利の内容や存続に関する証明書があります。
著作権を税関登録する場合には著作物の登録機関が発行した著作権登録証を利用します。
通常、中国の版権局が発行した登録証を利用しますが、日本の文化庁に登録した著作物に基いて発行した登録証を利用することもできます。
税関登録の有効期間は登録許可の日から10年と長いので、商標権や意匠権などでは有効期間内に権利が満了してしまうことが少なくありません。
著作権は少なくとも50年間は存続するので税関登録の有効期間を十分に活用することができます。
中国で知的財産権を取得する必要がなく、保護範囲が広くかつ保護期間が長いという特徴をもつ著作権を事前登録した中国税関を利用した模倣品対策は、費用対効果に優れた模倣対策であると言えるでしょう。